新型コロナウイルスの流行収束の「切り札」として期待され、日本国内でも接種が進むワクチン。
ワクチン接種によって「中和抗体」という抗体を体内に作ることでウイルスの働きを抑える、というのがワクチンの仕組みです。 ただし、ワクチンの効果には個人差があり、中には抗体が出来にくい人もいるとされているため、抗体が出来ているのか、気になる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
2回目の接種を終え、本当に効果があるのか、不安に感じている方も多いと思います。
ワクチンの種類によって差はあるものの、どのワクチンも新型コロナウイルスの発症・重症化・入院率を下げることが分かっています。
現在猛威を奮っているデルタ株は感染力が非常に強く、ワクチンをすでに2回打った人でも感染、いわゆる「ブレイクスルー感染」が起こることが最近の研究でわかってきました。
「ブレイクスルー感染」を発症した方では、感染前後の中和抗体価が低かったそうです。中和抗体価が高い人では、たとえブレイクスルー感染を起こしたとしても軽度または無症状で済むことが多いという報告もあります。
ここでは中和抗体とは?その仕組み、効果と中和抗体検査について解説いたします。
国内で承認されている新型コロナウイルスのワクチンのうち、主に接種が進んでいるファイザー製とモデルナ製のワクチンはどちらも「mRNA(メッセンジャーRNA)ワクチン」と呼ばれる種類のワクチンです。
新型コロナウイルスは、その表面にスパイクタンパク質(Sタンパク質)と呼ばれる突起状のトゲ状物質を持っており、 そのトゲが細胞のもつ受容体という部分に結合して細胞の中に入り込んで感染します。
mRNAワクチンは、長年研究が続けられていたのですが、新型コロナウイルスに対して初めて臨床応用されたワクチンです。 ウイルスがヒトの細胞に感染するために必要なスパイクタンパク質の設計図となる遺伝情報(mRNA)だけをワクチンとして投与します。
新型コロナウイルスは人間の細胞に自分の一部であるスパイクタンパク(Sタンパク)を結合させて、増殖を起こします。
中和抗体は先回りをして身代わりとなってスパイク部に結合してブロックし、新型コロナウイルスへの抵抗力(免疫)がつくという仕組みです。 そのため、中和抗体を保有している人は感染しにくくなるのです。
ワクチンの効果には個人差があり、中には抗体が出来にくい人もいます。
ワクチンを受けた人が受けていない人よりも、新型コロナウイルス感染症を発症した人が少ないということが分かっています。(発症予防効果は約95%といわれています) なお、ワクチンの接種で十分な免疫ができるのは、2回目の接種を受けてから7日程度経って以降とされています。
また、感染を完全に予防できる訳ではありません。ワクチン接種にかかわらず、適切な感染防止策を行う必要があります。
新型コロナワクチンを2回接種した場合、
横浜市立大学の研究グループの発表によると、変異株でも90%以上に中和抗体が確認されたという結果がでています。
https://www.yokohama-cu.ac.jp/news/2021/20210512yamanaka.html
新型コロナウイルス感染した場合も、
東京大学医科学研究所の発表によると、中和抗体は少なくとも3~6か月維持されるという結果もでています。
https://www.ims.u-tokyo.ac.jp/imsut/jp/about/press/page_00069.html
中和抗体検査をすることで、新型コロナワクチンの効果やウイルスに対する防御力の程度を調べる事ができます。 「血中に含まれる抗体の量(抗体価)」を調べることができ、検査に使われる試薬によって、以下の基準で陽性と陰性の結果を確認できます。
一般的にコロナ感染歴がなく、ワクチンを摂取していない方は、中和抗体を持っていない「陰性」であると判定されます。 反対に中和抗体を持っている場合、上記の数値を超えていれば「陽性」と判定されます。しかし抗体価はその数値に個人差が大きく現れることが確認されており、低い人と高い人では100倍以上の差が出ることもあります。
新型コロナ感染症で使用する検査として「抗体検査」がありますが、「中和抗体検査」とは別ものです。
中和抗体検査とは、ウイルスを撃退・排除し、感染防止に役立つ中和抗体が体内に存在しているかを調べる検査です。 検査後に中和抗体が存在していても、新型コロナワクチン接種をした方、されてない方との生活を共にすることが考えられますので、 引き続き、マスク着用や感染予防対策を継続されることをおすすめします。